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本当に必要な法律だと思うなら正々堂々やればいいのに

 新橋九段です。

 昨晩から今日にかけて、検察官の定年を延長する「検察庁法改正案」に反対するツイートが増大し、300万件を優に超える状態となっています。いままで政治的話題に冷淡なことが多かった芸能人も多数が呟いたことも含め、けっこう前代未聞の現象でびっくりしているところです。


 この法案の問題点をざっくりとまとめると以下の通りです。

・本来であれば定年を迎えるはずの黒川弘務氏を留任するために、まず法解釈を変えたがこれが従来の政府の見解と大きく矛盾する。

・そのような大きな解釈変更を閣議決定のみで行い、国会審議しなかった。

・この問題を解決するために法案を提出するが、本来であれば既に黒川氏は退職しているはずであり、違法状態を後から合法にする法案である。


・なぜ定年を延長するのか法務大臣や首相が説明できていない。

・法案を審議する5月8日の衆院内閣委員会に法相が出席せず。

・野党が出席を求める中で与党と維新はこれを無視し強硬開催。

・法案は多くの法案と一緒に採決する「束ね法案」になっている。

・にもかかわらず審議時間が短すぎる。


 問題点をあえて2つに分けています。上段は法案そのものの問題点です。ほかにも黒川氏が首相に近い人物であることなどが問題として指摘されていますが、その真偽に関係なく問題であることがわかるでしょう。


 下段は法案を成立させるための「手続き上の」問題です。私としてはむしろ、これこそが自民党政権下におけるあらゆる問題の根幹であると考えています。


 なぜ正々堂々できないのか

 法案は一般に「改正」案と呼ばれることからもわかるように、現状をよりよくするために提出するものだと理解できます。つまり、法案を提出した人たちは、その法案が必要で、その法案により現状が改善されると信じているから提出するはずです。


 であれば、その法案の成立過程にはケチがつかないほうがいいに決まっています。せっかくの「改正」案ですから、妙なところで因縁をつけられて正しく評価されないなんてことになったら台無しになってしまいます。そんなの、改正案を出した人は困る「はず」です。


 それに、現状を改善するための法案ですから、法案は時間をしっかりとかけて熟議し、立場の違う人たちから批判を受けてブラッシュアップして完成させるほうがいい「はず」です。気づかなかった欠点によって思わぬ悪影響があればやはり、せっかくの改正案が台無しだからです。


 だからこそ、法案は正確に手続きを踏んで、多くの人の支持のもと成立するのがいい「はず」です。正々堂々と議論を尽くし、しっかりと組み立ててこそ改正案が活きるというものです。


 しかし、与党と維新はそうしませんでした。「なぜか」姑息な手を使い、必要な答弁を怠り、コロナウイルスで大変な時を狙ったかのようなタイミングで法案を審議しました。


 「なぜ」彼らは正々堂々できないのでしょうか。彼らにとってこの法案は現状をよくするためのもの。いままさに起こっているように、改正案に大きな批判が巻き起こるのは避けたい「はず」です。


 本当はまずい法案だってわかっている

 とまぁ、皮肉めいて書きましたが、「なぜ」の部分はもうわかっています。

 実際のところ、彼らがこれを「改正」案だとはこれっぽっちも思っていないからです。正々堂々やったらあっという間に潰される酷い法案だとわかっているから、こそこそと成立させようとするのです。


 こう書くと、与党・維新支持者から「憶測にすぎない」と反論されそうです。もちろん憶測にすぎません。しかし、この憶測を否定する証拠はありません。そして彼らは、自分の支持政党こそ批判しなければなりません。余計なことをしたせいでいらぬ憶測を招いていると。


 ですが観測範囲では、そのようなことを言っている支持者はいません。十中八九、彼らもこの法案が「改正」でも何でもないことをわかっているのでしょう。


 手続きの骨抜きは自民の常套手段

 このような手続きの骨抜きは、自民党の常套手段となっています。

 記憶に新しいのは香川県議会のゲーム規制条例です。この条例は非公開の検討委員会と不可解なパブリックコメントによって、民主的手続きが破壊された状態で成立しました。


 特にパブリックコメントという、民主主義の根幹ともいえる仕組みを、コメントの改竄と捏造を行った疑いのあるのも、自民党の議員です。


 民主主義は手続きによって守られます。面倒な手続きがなければ逮捕もままならないからこそ人は自由に活動できます。議会の手続きは本来、様々な意見を取り入れ法案をより良いものにすることを促すものであるはずです。


 このような手続きを軽視するどころか、積極的に破壊するような政治家に自由を守ることはできません。


 検察庁法改正案には色々な評価がありましょう。しかし、単に手続きが守られていない、熟議がされていないという「外形的な」理由だけで、法案の改正を退けるには十分です。この問題は民主主義をどう捉えるかの問題であり、「民主主義を重んじる立場にあるならば」イデオロギーの左右には一切関係なく、反対しなければならないものです。

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