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山田太郎氏の表現にまつわる問題認識

 新橋九段です。個人のブログで書こうかと迷ったんですが、やはり1度ここではっきり問うべきだと思ったので。


 山田太郎氏は定期的に、自身のYouTubeチャンネルで動画を投稿しています。今回、表現にまつわる問題についてまとめて取り上げた回(【第373回】表現の自由〜あいトレ・アキバ看板・ウィーン芸術展など〜 【山田太郎のさんちゃんねる】)だったので、見ました。ざっくりとTwitterで感想を書きましたが、ここでもまとめます。


 トリエンナーレ問題

 動画開始から15分ごろから、まずあいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後』が受けた弾圧についてです。氏は交付金内定の撤回を批判しつつも「内容が理由じゃない」から問題ないという従来の説明をしました。


 補助金の不交付が内容ではなく、展示が中断されたためであるという政府の説明は単なる口実であり、実際には内容が問題視されていたことは種々の事実から明白です。そもそも補助金はトリエンナーレ全体へ対して交付されていたもので、中断を理由にするのであればその分だけ減額すれば済む話です。また内容が問題視されていたのは、名古屋市長の反応からもわかりきったことです。不交付が決定される経緯が議事録に残っていないといった不可解な点など、挙げればきりがありません。


 にもかかわらず、山田太郎氏は政府の説明を無批判に信じ込み、無問題としています。


 献血ポスター問題

 23分ごろから、日本赤十字社が使用したポスターに関する問題です。この問題は民間同士のやり取りなので口をはさめないという態度で、それはその通りでしょう。


 しかし、ポスターに対する批判を「気に入る、気に入らない」の問題に矮小化しています。そういう問題でないことはこれまでの議論で明らかであったはずです。


 ウィーンアンリミテッド問題

 これはウィーンと日本の友好を記念した展示において、一度外務省が出した認定を内容によって取り消したという問題です。


 山田太郎氏はこれについて、内容に基づいて判断されたことと、一度下された認定が取り消されたことが問題であると主張しています。

 それはそうなんですが、じゃあなぜトリエンナーレの時にも同じことを言わないのかが不思議です。


 エロゲポスター問題

 32分ごろから、秋葉原に掲示されたポスターについてです。ポスターが適切だと思わないとしつつ、千代田区が動いたのが問題だとしています。


 曰く、内容に基づいて指導しようとしたのが問題だというのですが、そもそもそういう条例ですし。その後の議論も、条例そのものの問題とポスターの問題がうまく区別できていない印象です。


 また、ポスターに使用したある表現が駄目だとなったら、ほかの場面でも全部使えなくなるかのような論調でしたが、これは表現する場所を考慮しない議論でしょう。ポスターにはまずくともパンフくらいならまぁ、という表現だってあり得ます。条例がそのような運用をしているかはわかりませんが。


 山田太郎氏の認識の問題点

 氏の議論は全体的にばらついていてわかりにくいのですが、こうして概観すると2つの問題点が浮かび上がってきます。


 1つは、手続き論に固執しているというところです。むろん氏は政治家なので、手続き上問題があるかどうかというのは重要です。しかし、手続き上問題がなかったとしても、機能として表現を抑圧しうるなら問題でしょう。それがまさにトリエンナーレであり、秋葉原のポスターでもあったわけですが、氏の態度は両者で真逆とすら言えます。


 もう1つは、表現への批判を「好き嫌い」「気に入る気に入らない」の問題へ矮小化してしまっている点です。これらの表現への批判がそういう問題ではないことはすでに語りつくされているところですが、表現の自由を守るという氏の認識がそこで止まっていて果たして大丈夫でしょうか。

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