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【表現の自由:私の主張】山田太郎よりも秘書に注目したら面白いっすよ~「エンターテイメント表現の自由の会」の理念について~

更新日:2020年1月28日

 2019年末に原稿を募集した『表現の自由:私の主張』、第3回はあおいんさんの記事です。


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 最初に言ってしまうと、僕は山田太郎をある程度好ましく思っています。日ごろの活動をオープンにしているので。透明性が高いって、いまどき尊いですよね…(遠い目)


 …というわけで、私はあえて彼の秘書の話をします。公設第一秘書としてあの選挙活動を取り仕切っていた坂井崇俊です。彼が主催する市民団体「エンターテイメント表現の自由の会(以下AFEE)」がとても興味深いんですよね。本稿では坂井崇俊とこの団体の主張を見てみたうえで、どういうリスクを抱えているかを考えてみたいと思います。結論から言うと、子どもたちを危険に晒しかねないことを自覚してほしいなって思ってます。


 さてAFEEは、基本理念によると「表現の自由を主張しつつ、マンガ・アニメ・ゲームなどエンターテイメントの全てのジャンルにおいて、わたしたち消費者の権利・利益を守る活動をする団体」です。表現の自由の会を標榜していますが、あくまで「消費者(マンガ・アニメ・ゲームを買って楽しむ人)の権利を主張する団体」なのがポイントかなと思います。この辺、広く表現を守るオタクの方々は思うところがあるかと思います(笑)


 ではどのような主張をしているかですが、一番スタンスがわかりやすいのはこちらの文言です。


   2)表現の自由の絶対的尊重と結果責任

   (前略)他人の人権を侵害する表現は、その結果に対して責任が伴うべきであり、 

   表現の発信及び受信行為そのものを制限するべきではありません。


 よくある論調ですが、難問含みですよね。「表現に責任をとる人、少なくないですか?そもそも責任、とりようがなくないですか?」という問題です。いろんな形があれど、人権侵害された側が報われることはめったにないです。名誉棄損の民事裁判で得られる賠償金なんてたかが知れていますし、それ以外の、例えばマイノリティ差別のようにマクロな人権侵害になるとそもそも裁判ができません。大澤昇平のように暴言でかえって一旗あげちゃう人は沢山いるのに。アンフェアですよね。だからポリティカル・コレクトネスだとか倫理規定だとかの表現ルールがあるわけですが、それでも上手くいかないもので。


 …と、ここまでは殆ど一般論なんですけど、問題は坂井崇俊がTwitterの自己紹介欄で「ポリコレ大嫌い」と明言してることです。国会議員秘書がそんなこと公言するあたりブッ飛んでるなと思いますが、彼らのいう「表現の自由の絶対的尊重と結果責任」とはそういう意味なんでしょうね。


 しかも、実は私が気になっている彼らの主張がもう一個あるんです。


   3)権利の主体としての青少年の自由

   (前略)青少年のエンターテイメントに触れたり、意見を発信したり、表現したい気

   持ちを歓迎し、積極的にその権利を守っていきます。


 これは21世紀の社会を考えるうえで極めて重要です。この20年で急激に、青少年が自力でエンターテイメント表現を発信できるようになりました。20世紀は発信までは出来ませんでしたから、これはすごいことです。だからこそ課題があります。「レペゼン地球」のケースを考えてみましょう。


 昨年、このレペゼン地球という若手音楽ユニットがいわゆる炎上マーケティングをしかけようと「セクハラの捏造」をしたところ、ガチ炎上となってしまい西武ドームライブ2DAYSや地上波出演がキャンセルとなってしまいました。どう考えても億単位の損害が出てますが、彼らは自主レーベルで活動しているので実質自己負担なのでしょう。そして後日彼らが語るには、数か月後に社会学者に解説を受けるまでキャンセルされた理由が全く理解できなかったといいます。つまり本人たちは真面目にやっていたつもりがある日突然訳も分からぬまま億単位の借金を抱えることになったわけです。これは極端な例に見えますが、「バカッター」と言われるような「若者が悪ふざけ写真一枚でとてつもない大損害」をするパターンは多いです。


 表現を担う青少年たちは今後、文字通り死にかねんような状況に見舞われやすくなるでしょう。逆にリスクなく社会的に有害な表現を拡散することもできるでしょう。20万年の人類文化史においてこんなヤバい状況はないですよね。そんな状況において、「ポリコレ大嫌い」な精神で「表現の自由の絶対的尊重」を唱え「権利の主体としての青少年の自由」を支援するってのは、鉄砲玉(銃弾とヒットマンのダブルミーニング)を育てているようなものです。


 消費者様って、殺すか殺されるかの世界がお好きなんですかね?

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