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執筆者の写真広く表現の自由を守るオタク連合

NHKから国民を守る党ではNHKから国民を守れません

 新橋九段です。

 今回は巷で話題のNHKから国民を守る党についてです。


 この政党に関しては、街頭演説での暴力的な行為、批判者への恫喝などすでに政治家として不適格なことは公然の事実でしょう。しかしながら、彼らの主張する「NHKをぶっ壊す」に少なくない人が賛同しているのもまた事実です。


 N国の跳梁跋扈を止めるには、彼らの主張の根幹である「NHKをぶっ壊す」が無意味かつ不可能であることを明らかにする必要があります。


 NHK受信料はどうやって決まるの?

 そもそも、NHKの受信料はどうやって決まるのでしょうか。調べてみると、NHKが自身のサイトで説明をしていました。


 NHKは毎事業年度の収支予算、事業計画および資金計画を作成し、総務大臣に提出します。総務大臣は、これに意見をつけ、内閣を経て国会に提出します。国会では衆参両院の総務委員会での審議を経て、予算を承認するか否かを決定します。受信料の月額は、この収支予算に盛り込まれています。
 毎年度の受信料の月額は、このように、収支予算の国会承認によって決まることになっています。

 NHKの活動は総じて、総務大臣→内閣→国会というルートで承認されることになります。つまり、N国が受信料をどうにかしたいと考えるのであれば、このルートのどこかに食い組む必要があります。


 現状極めて少数政党であるN国の議員が閣僚になる可能性は皆無なので、自民党を説得して何とかするというのが現実的なルートです。しかし、このルートも実現可能性に乏しいといえましょう。なぜなら、N国はすでに「NHK以外の政策は多数派に従う」ことを公言しているからです。自民党からすれば放置しても自分の味方をしてくれる人たちなわけで、わざわざ彼らの意見を聞いて自分たちの政策に取り入れる義理もメリットもありません。N国は自ら、自民党との交渉カードを捨てているのです(いや、仮にそうじゃなかったとしても泡沫政党の主張をあの自民党がまともに受け入れるとは思わないけど)。


 こういうわけで、N国がNHKをぶっ壊すことはほぼ不可能です。N国に投票するくらいなら自民党に投票して、そこの議員に訴えるほうがまだ可能性があるといえましょう。


 スクランブル放送は公共放送に反する

 もう1つ、N国が主張するのがスクランブル放送です。これは、受信料を収めた人だけがNHKの放送を見れるようにするというもので、一見合理的です。ですが、そうではありません。これについてもNHKが解説しています。


 NHKは、広く視聴者に負担していただく受信料を財源とする公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、いつでも、どこでも、誰にでも分けへだてなく提供する役割を担っています。
 緊急災害時には大幅に番組編成を変更し、正確な情報を迅速に提供するほか、教育番組や福祉番組、古典芸能番組など、視聴率だけでは計ることの出来ない番組も数多く放送しています。
 スクランブルをかけ、受信料を支払わない方に放送番組を視聴できないようにするという方法は一見合理的に見えますが、NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます。
 また、スクランブルを導入した場合、どうしても「よく見られる」番組に偏り、内容が画一化していく懸念があり、結果として、視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まって、放送法がうたう「健全な民主主義の発達」の上でも問題があると考えます。

 公共放送は性質としては、水や電気といったライフラインに近いものがあります。違うのは、公共放送は見なくても死なないというところです。これが話をややこしくしています。


 NHKの価値は、営利に捉われず必要な放送をその場その場で行えることです。例えば、地方都市の災害情報は、大抵の民放ではしばらくすると流れなくなりますが、NHKはその後も比較的長く放送しています。民放はスポンサーからの広告費を稼ぐために、ときには社会的な必要性よりも視聴率を稼ぎやすい番組を優先することになります。一方、NHKは受信料で成り立っているため、そのようなことを気にしなくて済みます。


 このような背景は、大河ドラマのようないまや民放では不可能な規模の作品や、外国語講座のように視聴率は見込めないが確かに必要なものを制作するのにも役立っているでしょう。視聴率を気にせずに作るべきものを作ることができるというのは、文化振興の面からも重要です。


 スクランブル放送を導入すれば、結局は視聴率に捉われる民放と同じになってしまいます。そうなれば、公共放送が存在する意味はなくなります。


 NHKにも問題はあるが

 確かに、現状のNHKにも問題があります。もっともそれは、(ネット上などで一般に言われるのとは逆に)NHKがマスメディアとして権力監視の機能を果たしていないという面での問題ですが、少なくとも批判すべき場所が皆無というわけではありません。


 無理のある契約や受信料徴収など、方々でトラブルにもなっています。

 しかしながら、それらの問題はN国の議員をたくさん当選させれば解決する類のものではありません。これらの問題はマスメディアの在り方をきちんと理解し、より適切なシステムを構築するという丁寧な過程を経なければ解決しないものであって、安直に「NHKをぶっ壊す」などと公言する人々の姿勢とは対極にあるものです。


 N国の候補・議員は街頭演説で批判的な発言をした市民へ暴力的な攻撃をしたり、批判的な芸能人を恫喝するなど、表現の自由と真っ向から反する行為を常習的に続けています。このような人物を国会の席に座らせるわけにはいきません。

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